密室 TALK #1 ナカヤマアキラ(Plastic Tree)

【出会い】

ナカヤマ:ふんわりだよね(笑)。

村瀬:ふんわり(笑)。俺が覚えてる範囲だと、元々はPlastic TreeのインディーズからデビューにかけてドラマーだったTAKASHIとプラ加入前にバンドをやってたんだよ。

ナカヤマ:大正谷さんと?それ、知らなかった(笑)。

村瀬:あれ、知らない?TAKASHIも俺もまだ全然デビューする前で、町田でやってたんだけど、半年くらいである日来なくなって(笑)。俺、今でも会ったら言うんだけど、彼は「連絡した」って言うけど、俺たちは何も聞いてないよって。

ナカヤマ:その手の話はいっぱい聞く(笑)。

村瀬:まあ、そのときはそれで終わっちゃって、あるときFOOL’S MATEかロッキンfを見てたらPlastic Treeってバンドに…「これTAKASHIじゃね?」って(笑)。

ナカヤマ:そうだったんだね(笑)。

村瀬:あれよという間に彼はデビューしてしまって(笑)。俺も2000年にデビューして、音楽雑誌UVの「UV presents special live 対バン・猫対犬~渋谷決戦~」って渋谷AXでのイベントでTAKASHIとも久しぶり会って、アキラ君と初めて会ったのがここかな(笑)。

ナカヤマ:それを言われて、そこが初めてだと気づきました。そのあとも、表参道でちょこちょこ会ってたよね?毎回「ご無沙汰です、ご無沙汰です」って(笑)。

村瀬:うん(笑)。2010年前後くらいに、(長谷川)正くんともすごい飲んでて、渋公のファンクラブイベントとかJCBホール、もちろん武道館も観に行かせてもらったりで。

ナカヤマ:へえ。最近だと「大中-Date you-」で、TEARS OF THE REBELのイベントに呼んでもらって、やっぱり「ご無沙汰です」みたいな(笑)。

村瀬:ご無沙汰の積み重ね(笑)。

ナカヤマ:でも「ご無沙汰」も積み重なると、LINEでしか連絡しないような時代じゃないですか。「ご無沙汰」って言っておきながら、そんなに「ご無沙汰」してる気がしない。

村瀬:確かに。webを見れば、Plastic Treeはアクティブに活動してることがわかるし、新譜やMVを一方的にチェックできるしね。

ナカヤマ:逆に村瀬君はブランドをやってるから、うちのメンバーが服を着てたとか、そういうの情報で入ってくるしね。

村瀬:だからご無沙汰感がすごく薄いんだよね(笑)。

ナカヤマ:こんな時代なのに連絡をマメにしてもないんだけどね(笑)。

村瀬:最初に言った通り、ふんわりしてるから連絡すらないよね(笑)。

ナカヤマ:第1回がこんなんでいいのかな(笑)。

村瀬:お互いそうなんだと思うんだけど、空気感とかフィーリングが合うから、第1回はアキラくんとが良いと直感で思ったんだよね。ギタリストとしても尊敬出来るし。

【ルーツ】

密室 TALK #1
村瀬:この間、イベントに出てもらったとき、ギター弾くの間近で見てて「やっぱ、うめえな」って。

ナカヤマ:いやいやいや。

村瀬:そのアキラくんにある、音楽的バック・ボーンを聞いてみたい。

ナカヤマ:音楽はね、世代的に洋楽じゃないですか?なんですけど、ことギターだけに関しては、ハード・ロックの影響の方が強いから、LAメタルがルーツになってしまうんだよね。自分でも気づかないけど、実はVan Halenなんですよね。

村瀬:ほお。やっぱり思った通り、メタル・ハードロックだ!!

ナカヤマ:LAメタルというとMötley Crüe、RATTの戦いだったりするじゃないですか。モトリー派がいっぱいいるのに、俺1人だけ「どっちが好きだ?俺はRATT派!」みたいな(笑)。

村瀬:(笑)。俺、すごく面白いと思ったのが、Plastic Treeの楽曲でそういうギターが入ってるところなんだよね。

ナカヤマ:どう見てもアメリカンなギターで、UKサウンドを出そうとしてますね。多分、バカだったんでしょうね(笑)。

村瀬:(笑)。いやいや、そこが個性でしょ〜。

ナカヤマ:レスポールとか持ってたんですけど、どうもしっくりこない。かといって、ストラトでもどうもしっくりこない(笑)。

村瀬:なるほどね。Plastic Treeの曲ってUK寄りだったり、ちょっとネオアコぽかったりするでしょ。そういうところに、あのギターが入ってるのは他に無いオリジナルだなって。

ナカヤマ:仰る通りで、本来はGibson ES-335とか持つべきなんです(笑)。

村瀬:それを敢えてっていうのが面白いんだよね。

ナカヤマ:これは公の場で言ったこと無いかもしれないんだけど、完全にセレクト違いってことを認識できなかった自分がいるんです(笑)。ただ、当時SUEDE とかのUKサウンドがすごい流行ったじゃないですか。みんなレスポールに行ってるんだけど、こっちは良いレスポールを手に入れられなかったし、どうにも金銭的にハードルが高くて買えない。WashburnのN4だって、そんなに安いものじゃないのに「これだ!」って思ったんでしょうね。その辺が「チンプンカンプン」の始まりな訳ですよ。

村瀬:俺、そういうの嫌いじゃないっすよ(笑)。

ナカヤマ:オリジナリティを求めてたんじゃなく、チンプンカンプン(笑)。

村瀬:でも、今はオリジナリティになってますからね。

ナカヤマ:ねえ。JAPANってバンドがすごい好きなんですけど、最初はずーっとおかしな音源ばっかり出してて認められなかったけど、最後の10年目で勝ったじゃないですか。10年やれば、ホンモノになる。それを信じてたフシはあるんです。「今はPlastic Treeの評価が低くても、10年後には俺はホンモノになるんだ!」って。

村瀬:なるほど、それを信じて今があるんだね。いい話だ。


【機材】

ナカヤマ:でも、その言葉を信じてる時点で、チンプンカンプンなことをやってる自覚はあったんだなって(笑)。ホントはね、村瀬くんみたいにちゃんと「レスポール!マーシャル!」みたいな、本物の人に言うのが恥ずかしいっ。

村瀬:そんなことはないよ(笑)。

ナカヤマ:この前に対バンしたときも、「どうやって音を出してるんだ?直なんじゃないのか?」って、村瀬くんに確認をしに行ったじゃないですか。見てみたら「うーん、ちゃんとペダルは挟まってるな」って(笑)。

村瀬:最低限だけだけど、少しだけ(笑)。

ナカヤマ:で、聞いたら「このアンプはここの現場のだ」って。よく出るなと思ったんだけど、やっぱ音を出す揺るがない本人のサウンドがあるから、どこのアンプ使ってもこうなんだな、ってワタシは認識してます。

村瀬:大先輩に褒められましたよ(笑)。

ナカヤマ:羨ましいですよ。俺もそうしたいんだもん。ギター1本持って位のフットワークで、100%の自分を出したいんですよ。でも、現場で「Marshall JCM2000」って聞いたら「無理だ!なんか挟ませてくれ!ちょっと歪むだけでいいんだ!」みたいな。それくらい2000っていうのは定番だけど、非常にハードルが高いアンプなんですよ。ジャストミートしたらすごい良い音が出せるんですけど、それ故にちゃんと考えていかないと、とんでもない目に会う(笑)。

村瀬:それ良くわかるなー。今のアンプは?Kemper導入してたよね?

ナカヤマ:だいたいKemperですね。あれは便利なの(笑)。もちろん、良いところもあれば悪いところもある。だけど、機材なんて言ってしまえば、そういう所がたくさんあるけど、良いところを引き出すということに特化していったりするじゃないですか。

村瀬:その良いところを訊きたいな。

ナカヤマ:大体80点。色んなことを困らずに繋げたら、80点は出せる。これは現状の限界として、みんな言ってます。ロックって、120点出さなくちゃいけないときがあるじゃないですか。「オマエ、リハでこんなことしてないでしょ!スゲーな!」みたいな。

村瀬:本番ならではのね。

ナカヤマ:「よし、俺も!」ってときに、デジタルは90点以上は出ないし、ど根性の部分に行くと、どうしても追いつかない。

村瀬:なるほど。それは使ってる人の貴重な意見だ。デジタルの限界かぁ。

ナカヤマ:本来、接点なんて極力ない方が良い音じゃないですか。あれだけ繋げてるのに、1個でも減らしたい俺がいて、この接点が無くなるだけでどんだけ良い音に…みたいな無駄な努力を(笑)。

村瀬:いや、無駄じゃないよ(笑)。因みにライブってワイヤレス?

ナカヤマ:違います、ワイヤードです。俺、決め打ちで「ここだけはパフォーマンスしてください」っていうワイヤレス以外は、どんなデカイ会場でもシールドで、絶対にこれは揺るがないんですよ。

村瀬:そこは一緒だな。絶対シールドの方が音痩せなくて良い音だよね。デカイ会場で見せる事を想定してるなら分かるけど。じゃあ、普通に10mとか?

ナカヤマ:うーん、プラツリは10m。どっかでセッションに行くときは5mかな。時々「あれ?ワイヤレスじゃないんですか?」って言われるんですよ。ハコが大きい現場で「こういうパフォーマンスで出てきてください」ってなって、ワイヤレスじゃないから一瞬どうするのって空気になるんだけど、10mあるから全然余裕(笑)。

村瀬:(笑)。今シールドの話だけど、他に音への拘りってある?

ナカヤマ:音の拘りといえば、去年くらいからたまたま、Kemperを手にして。それでも、Kemperはオーディオ的には良い音なんですけど、ギターのハイやローなんて、周波数的に知れてる訳で。そういう部分が強調されたようになんとかならないかなと、自分でブースターを作り始めたんです(笑)。

村瀬:え、ゼロから作ってるの?

ナカヤマ:基盤図を見て、部品買ってきて。さすがにディレイとか、すげえ部品が多いのはちょっとアレなんですけど、前からビックマフのコピーとかは作ってたんで、そのノリで。で、何個か作ってるうちに「こういうことか!」と。売ってない、俺だけの物を手にしたぞ!って(笑)。本当は、安上がりだってのが8割なんですけど、オトコなんてぐいぐいオトコならではのロマンにズレていくから(笑)。

村瀬:自画自賛(笑)。

ナカヤマ:自分で作ったから、自分を褒めたいみたいな。どんどん、目的から逸れてく(笑)。でも、ちょっとだけまた自分の思い描いたサウンドに近づけたって。ちょっとピックアップ換えただけで、また俺に近づけたって感じと同じですよ。

村瀬:それ、ライブでも使ってるんですか?

ナカヤマ:ライブのものは全部やりました。

村瀬:凄い!この話はギターマガジンでした方がいいんじゃないかな(笑)?

ナカヤマ:ホントはね(笑)。ただ、そんなに高度なこともやってないわけですよ。町の楽器屋さんに行って「この3,000円くらいのディストーションがすげえ良いよね!」っていう賭けみたいなもんじゃないですか。ご予算から大幅に超えたシステムじゃない部分のオトコのロマン、村瀬くんならわかってくれると思う(笑)。

村瀬:わかります(笑)。でも、そこまでとは思わなかった。

ナカヤマ:どっかの◯◯って高いメーカーのオーダーしてるっていうタイプだと思ってた?

村瀬:いやあ、でも基本的にそういう部分もあるかなーって思ってた(笑)。

ナカヤマ:見たこと無いでしょ。そっちの雰囲気(笑)。それでOKなことをやっているから、今が100点なんですよ。それに至るまでに、ワタシはチンプンカンプンなことを(笑)。

【タトゥー】

村瀬:アキラくん、今はがっつり墨が入ってるけど、最初に会ったときは確か入ってなかったよね?

ナカヤマ:最初はまっさら(笑)。
入れたきっかけは、何の気なしだったんですよ。ずっと入れたいと思ってて、一つ入れてみまして。大正谷さんに「ワンポイントで入れると、もっと入れたくなるよ」と言われ、確かに入れたくなったんですが、その「入れる理由」が無い訳ですよ(笑)。ただ、人間性として凄く大事なことをやってても、”もういいや”癖があるんですよ。

村瀬:リセットしちゃうみたいな?

ナカヤマ:すぐリセットしちゃう。そうやって否定しないと、先に進めないみたいな強迫観念みたいなのもあるんですけど、そのノリで「Plastic Treeを辞める」「違うことやってやる」みたいなことを思わないようにしようと。下手したら、Plastic Treeを辞めて明日からサラリーマンやるとか、俺は言い出しかねない(笑)。そのサラリーマンになれない方法はなんだ(笑)?

村瀬:(笑)。弱い自分を出さない手段として体に彫んだと。

ナカヤマ:それでTATOO。何というか、TATOOを入れることで引けない自分を作ることで、希望を持ったわけです。

村瀬:良くわかるよ。「俺はこれしかない」って追い込む意味合いを持たせてだね。

ナカヤマ:俺はギタリストであり、ロックをやる人間だということで腹をくくろうと。俺はロックというもので人生を行くぞって入れました。

村瀬:なるほどね。

ナカヤマ:これが本音です。なんかお洒落とかじゃなくて、こういう想いをのせて(笑)。まあ、確かにファッション的にも自分の体に消せないもの入れる、異端な方に入っていっちゃいますよね。でもね、そっちよりも「もういいや」な俺を何とかせねばという。ちょっと気に入らないだけで、もう「バンドを辞める」って思っちゃいけない。みんな頑張ってるのに、周りが見えなくなるんですよね。

村瀬:バンドあるあるだよね。若いときは、特にそう言う気持ちが生まれやすい。

ナカヤマ:20年も現場で一緒に居て、やっとそういう気持ちもわかるけど、その当時は言われりゃ気に入らないこともあった。今思い出すと、むしろ周りのメンバーの言ってることの方が全然正しかった(笑)。みんな、育ててくれてありがとう(笑)。


【活動】

村瀬:それちょっと訊きたかったんだ。Plastic Treeは活動期間が長いし、色々あると思ううけど?

ナカヤマ:正直あります(笑)。でも結局、20歳くらいからツレになっちゃうから、そういう学生時代とのツレとはまた違った「家族感」なんだよね。

村瀬:別なファミリーね(笑)。

ナカヤマ:まあ、そのファミリーを一からやるにあたって、最初の1年から5年くらいは小競り合いですよ(笑)。

村瀬:20代はみんなそう。喧嘩だよね。

ナカヤマ:「テメエ、ぶっ◯す」みたいな(笑)。例えば中学生のときに、家族とやり合うようなことをやるわけですよ(笑)。それを経て、「君の言ってることもわかるよ」って頃合になり(笑)、何も言わなくても「わかるわかる、まかせたわ」みたいな感じになるのを繰り返して20年。年齢的にも落ち着いて…もう自分の家族より長いんですよ。普通の家族だって、朝から出て行って夜のご飯まで会うか会わないか、下手したら1日会わないときもあるじゃないですか。でも、バンドのメンバーって不思議なことに真逆で、寝るときにやっと離れられる(笑)。

村瀬:そうそう(笑)。共有時間が長いよね。

ナカヤマ:どこかで意識が変わったんです。人間ですから「もうコイツと会いたくない」とか「コイツと居ると腹が立つ」ってあったけど、楽しいこととか、阿吽で出来るときの喜びとか、そういう時間の方が圧倒的に長いから。

村瀬:じゃあ、今はお互い信頼していられるんだ。

ナカヤマ:敢えていうならそれが信頼なんでしょうね。って、お互い恥ずかしくなっちゃうし、顔が真っ赤になっちゃうから言えないですよ(笑)。前に「これが信頼なんじゃないの」って、切羽詰ってる打ち合わせとかで言ったことあるんですよ。「俺はこう思ってるけど、みんな分かるでしょ?!」みたいな熱い気持ちを言ったら、「うーん、うーん、うーん」って恥ずかしそうに言うんです(笑)。「あ、ごめん、俺も今恥ずかしいこと言った!」って(笑)。

村瀬:みんな受け止めてもくれるんだ(笑)。

ナカヤマ:うん(笑)。「バカなこと言ってんじゃねえよ」でもなく、言葉が詰まった感じで「うーん、うーん、うーん」って、恥ずかしそうに言ってくれるんですよ。村瀬くんもそういうのあるでしょ?

村瀬:俺も今のTEARS OF THE REBELのボーカルのKOJIとは、ブランドもやってバンドも一緒にやってて、1日中一緒にいるわけですよ。しかも、今までやってきたバンドの中で、TEARS OF THE REBELが活動期間が一番長くて、彼が居ないと出来ない事、やれない事があるって言うのも自分で理解出来てるし。持ちつ持たれつって感じ本当に。それがバンドなのかなとも思うし。

ナカヤマ:突き詰めていくと、バンドだけに限らず長い間共にする集団の課程を20年かけて勉強させてもらったみたいな。

村瀬:人として成長はしますよね。まあ、ちゃんと社会に出たことない我々ですから(笑)。

ナカヤマ:(笑)。集団って育ててくれますよね。それが10代のときとか、20代で気づくかな…気づきたくないというか(笑)。

村瀬:敢えてね。

ナカヤマ:俺に対しての助言は「育ててくれてるんだ」とは思いたくない(笑)。30代くらいになると、だいぶ分かるけどさ。40代の今は「ありがとうございます!その言葉欲しかった!」っていう風に聞ける(笑)。ちなみに、なんでブランドをやろうとしたの?だって、転身するなんて多いことだけど、全く不思議では無い訳だけど、片手間じゃない本職じゃないですか?

村瀬:それは、ボーカルのKOJIが、​CRIMIEっていうブランドのモデルをずっとやってたのが入り口なんだよね。あるとき、彼がブランドサイドから「やらない?」って​話もらって、そのとき「バンドのメンバーも一緒にどう?」って話に展開して。俺は絵も描くし服も好きだけど、知識の無い自分一人では出来ないことじゃない?

ナカヤマ:確かに。

村瀬:ブランドの立ち上げってとても貴重な話だなって。色々考えて、自分も一緒にやりますって。

ナカヤマ:ブランドでデザイナーをやっていくってことと、例えばバンドで衣装を担当するレベルとは違うわけで。それが凄い。そもそもロックの人なのに、服を作りたいって志したわけじゃないでしょ?

村瀬:うん、志してはいないよ。でもミュージシャンでブランドやってる人って、清春さんとかいるじゃないですか。

ナカヤマ:はいはい。でも村瀬くんは、デザインっていうもっと深いところに行くじゃない?変な言い方だけど、そっちとロックを両方で本業にしてるって言ってもいいくらい。

村瀬:そう、やるからにはどちらも本気でやりきってます。妥協無しで。性格的に手が抜けないんで。まあ、相方と二人三脚で進めてる感じかな。

ナカヤマ:これを言ってしまったらなんですけど、音楽にせよデザインにせよ、我々はオトコのロマン系の仕事じゃないですか。天井知らずで、幾つになっても「まだ、頑張ってます」っていうのを選んでしまったじゃないですか。

村瀬:うん。本当にね(笑)。

ナカヤマ:20年やってきたバンドには感謝もしてるし、積み重ねてきたものに関しての等価はいただいてるんですけど、いつでも一年生なんですよね。ここで踏ん反り返って、ベテランっぽい気持ちで曲を作ったときに、バーンって首をはねられたときのことを考えると、いつまでもペーペーでいたいみないな。村瀬くんだって、ギタリストとしてそんなベテランな気持ちでなんてやんないでしょ?

村瀬:もちろん、やんない、やんない。そんな気持ちにもならないしね。

ナカヤマ:どっかで「無理、無理。そういう気持ちは無理」って思ってるんですよ。なんか芸能人だって、居なくなる場面を山ほど見たじゃないですか。で、言葉に出来るようになったんです。「いつでも世の中から消されるんだ俺ら」って。

村瀬:確かに。わかる、それ。もう何十年もギター弾いてるのに「俺、このミュート出来てんのかな」って(笑)。

ナカヤマ:同じく(笑)。対バンとかいくじゃないですか。本気でうまいギタリストが来たら、俺本気でライバル心を持って接しますよ「悔しい、上手いなあ」って(笑)。キングカズが小学生に本気でいく、みたいな。それは、大人気ないとかそんなんじゃないですもん。

【時代】


村瀬:それこそ音楽だって、楽器が弾けなくても曲が作れる時代で、それはそれで良しとされてるというか。俺らからいくと「それ、無くね?」って感じもないわけじゃないけど、そういうのも今はアリって言うか。それを否定しちゃいけないし、そういう中でやり続けていかないといけないから。

ナカヤマ:時代性も違いますよね。90年代と今が明らかに違うのが、情報共有のスピードでしょ。我々クリエーター側も、それを手に取るスピードがまるで違う。昔はみんなトロいから(笑)、ガラパゴスで良かったじゃないですか。発信したものに対して4人が集まって、4人共が良いって言えばそれで良かったけど、今は発信しちゃえば、いきなり不特定多数の評価を得られちゃうでしょ。未知の世界とでも言うか…。

村瀬:それも含めてアリの時代なんだよね。それこそ俺らの時代って、ウォークマンから始まってるじゃないですか。

ナカヤマ:そうですよ(笑)。

村瀬:うちらはその過程を全て見てきてる世代で。どっちが良いとかはないけど、その温度差を正直感じるときはあって。でも、それを知ってる・知っていないの良し悪しで、何かを計るものでもないと思うんだけどね。

ナカヤマ:手段が違うだけかもね。”本当にこれを知ってなくちゃいけない”という行為では、90年代の我々世代が1番分が悪い。例えば、音楽の70年代まで遡る方法で、ネットなんかないわけですから。

村瀬:今みたいにYouTubeで何でも探せる時代じゃなかったからね。

ナカヤマ:大先輩の70年代って、また厳しい方々じゃないですか。すし屋の大将じゃないけど「見て覚えろ」って(笑)。そんな親切な人は居ないわけで、何故ならば自分の持ってる情報が、貴重な物だって知ってるからだよね。だからこそ、簡単には譲らないし譲るに値する人間かのジャッジもされる。そのくらい、今と比べると情報を得るのは大変で、その先輩たちも情報は少なかったけど、その分貴重なオリジナリティがたくさんあった。それを学ぶ土台として、例えば譜面とかもきっちり読めなければ、音楽家としては成功できない人たちですから、凄く勉強してますし。そういう人たちに挟まれた、俺らみたいにどうしようもない人間が(笑)。

村瀬:間世代というか(笑)。

ナカヤマ:頼れるものは仲間だけ(笑)。

村瀬:名言!

ナカヤマ:ねえ(笑)。頼れるものはバカな仲間だけって。今の人たちは、バカな仲間も優秀な機械もあるしな。「ツェッペリンのあのリフは、どうやって弾くんだろうって?」っていう情報源さえわからなかったけど、今の子達はYouTubeで1発でバーンって、羨ましい!

村瀬:ホントに便利だよね。俺も当時は得られなかったBOØWYのライブや過去の映像が観れてるし。

ナカヤマ:俺も当時、何回ブート屋に郵便書留を送って買ったか(笑)。しかも、送られてくるのがザラッザラの画像のVHS(笑)。

村瀬:騙された感いっぱいのね(笑)。

ナカヤマ:そう考えると、今の世代のミュージシャンからどういう回答が出るのかは、やっぱ10年後なんだろうね。俺もこの年になって、90年代のミュージシャンの武器は「バカな仲間」って(笑)。30代のときは、その言葉浮かばなくて「どうしようもない世代じゃないですか」って言ったことがあるくらいだけど、改めて言えば”かけがえのないバカ野郎共”が武器ですって言える。ところで、今までこんな内容で取材したことないくらい、ただ飲みの席で熱く語ってる話だよね(笑)。


【アニメ・漫画】


村瀬:最初のコンセプト、企画には沿ってるし全然OK(笑)。少し、ライトな話に変える?アキラくん、映画とか観る?

ナカヤマ:映画は観るは観るんですけど、最近だと「君の名は」とか。でも、観たいんですけど家で観たいなと思ったとき、PLAYを押したら、急に掃除とかしたくなるタイプ(笑)。

村瀬:なんだそれ(笑)

ナカヤマ:急に思い出して、掃除機かけたいとかすぐ思っちゃうんだよね。だから本当に観たいのは、敢えて深夜帯を選びます。で、基本アニメが好きなんですけど、漫画原作のやつかな。最近はね、アニメより漫画の方が多いかもしれない。

村瀬:うちら世代ってジャンプだよね?

ナカヤマ:俺ね、10代のころはジャンプだけだったけど、社会に出てからは3つ(ジャンプ・マガジン・サンデー)とも未だに読んでる。

村瀬:え、未だに?少年の心を忘れてない(笑)。じゃあ、人生を変えられたなってくらい影響された漫画ベスト3は?

ナカヤマ:俺いつもアニメに変えられてるからな(笑)。「ガンバの冒険」と「ザンボット3」とか?

村瀬:ガンバのあのダークさはヤバいよね。

ナカヤマ:ダーク過ぎ(笑)。あれはホント寝れないくらいシルエットが怖いし、昭和のアニメってバカボンでさえ怖いもん(笑)。で、ガンバで学んだのは「仲間って大事だな」って(笑)。

村瀬:(笑)。アニメから学ぶことは多いよね。

ナカヤマ:学んでるはずなのに、20代になると忘れてた。

村瀬:(笑)。あとねえ、俺自分のポジションにも精通する所があって、ガンバでいうと主人公じゃない、その脇に居るけどかっこいいヤツ。

ナカヤマ:イカサマ?!俺もわかる。ゴレンジャーでいうとアオレンジャーみたいなね。

村瀬:そうそうそう。だからボーカリストをやらないの(笑)。

ナカヤマ:わかるよ!下手したらメインも食っちゃうぜみたいな。今の良い質門だったね(笑)。村瀬くんは何が好き?

村瀬:回数で1番多く観たのは「カリオストロの城」だね。

ナカヤマ:マジで?俺も何回も観てはいるんだけど、ルパン・ファンにはカリオストロのルパンは違って、本来はあんな人間じゃないんだって。それを聞いてから、急に観ちゃいけないものみたいになっちゃって。

村瀬:原作とかとはだいぶ違うキャラなのは確か(笑)。そう考えると、うちらが幼少期に読んだコロコロとかボンボンって、全部残ってて凄いよね。

ナカヤマ:小学校の頃に創刊されて、1から買ったもん。

村瀬:おぉすごい、負けた(笑)。

ナカヤマ:でもね、2つとも買うとお金が足りない(笑)。

村瀬:当時、2冊で660円だからね!

ナカヤマ:660円は大金だったっていう時代ですよ(笑)。

村瀬:漫画もそうだけど、こうやって話をしてても、この関係だから成立することが多かった気がする(笑)。

ナカヤマ:でも、お題目が必要な時もきっと来る(笑)。

村瀬:次の”ご無沙汰”の約束でもする?

ナカヤマ:フットワークを軽くして、長いスパンで見よう(笑)。別れ際とかもライトで「じゃあ、また!」って感じだしね。人によってはご大層に「じゃあね、じゃあね、連絡するからね!」って言うけど、そんなのは一度もないですからね(笑)。

村瀬:ないですね(笑)。でも真面目な話、同世代だと共通の話が多いし、フィーリングも合うのが嬉しい。俺の方がちょっと年下だけど。

ナカヤマ:だったの?!

村瀬:うん(笑)。だけど、優しいっすよね。こうやって話してても楽しいし。

ナカヤマ:そうだね。だって、今日の話を振り返ってみると、我々の最大の財産というのは”かけがえのないバカ野郎共”ですから。


interview & text Atsushi Tsuji (classic0330)