【出会い】
高木:まず最初に、オレと村瀬が知り合ってさ、多分もう20年ぐらい経つよね。
村瀬:それくらい経ちますよね。
高木:その20年ぐらい経って、オレ1回も村瀬と飲みに行った事がないよね。飲んだとしても打ち上げだし、そんなに話ししたこともないよね。
村瀬:ないですね(笑)。HATE(HATE HONEY)の頃は特に。
高木:それがだよ、20年経っていきなり村瀬がメールで「フトシさん、ちょっと1杯やりながら対談しませんか」って。
村瀬:(爆)いきなり!!
高木:って、来た時はちょっと驚愕したというか。ピュアだなと思ってビックリした。
村瀬:変わるよね、人って。
高木:いや、変わってないんだって。対談だからね、これ。別に飲みに行っている訳ではないし、飲みの誘いをオレが受けたわけじゃないから。
村瀬:未だにね。
高木:だけど、なんかこういう形で誘ってくるのも、村瀬なんだろうなと思って。なんかもうねえ、すごい嬉しい。
村瀬:そうですね、こういう形は初めてですけど、オレはロフトでHATE(THE HATE HONEY)の初期の頃から観ているんですよ。で、その当時はT$UYO$HI(TheBONEZ /Ba.)と一緒に、よく小滝橋の旧新宿ロフトに行っていて、中打ち(中打ち上げ)とかにも結構居たんです。
高木:話は知ってる。
村瀬:話さなかったのは別にフトシさんだけではないんですけど、中打ちってメンバーがセンターに陣取ってその周りにファンがいて、それをずっと遠目で見ていたんです。で、フトシさんはステージでも余りMCもせず。で、髪も長かったじゃあないですか(笑)。
高木:長かった?今で言うただのコスプレね。
村瀬:カートの(笑)。で、ライブ中は良く見えないし隠れてて。で、「どんな人なんだろう?」という興味がずーっとあって。当時の相方とされる八田さん(HATE HONEY / 現DALLE / Ba.)の事は、前のバンドからよく知っていたので。
高木:DEEPね。
村瀬:DEEPも大好きで。でもHATEに関しては、そのメンバーの誰かが好きとか憧れているとかではなくて、バンドがカッコいいなと思って。出している音もそうだし、佇まいも好きだったし。で、ライブに頻繁に通っていて、オレよりか先にT$UYO$HIだったり有原(drug store cowboy / vo.)の方が、こう。
高木:グイグイ来ていた。
村瀬:時を経て、自分もdrug store cowboyでデビューして2枚目のシングルの時に「フトシさんをゲストで呼びたい」って話しになって。確か1番最初に来てもらったのは、イニックという湘南のレコーディングスタジオなんですけど、その時もオレは多分挨拶ぐらいしかしてないんですよ。
高木:してない、してない。
村瀬:もう今思えば、申し訳ない話なんですけど…。あの頃は自分的に考えると、あんまり社交的ではなかったので、すいませんとしか言えないです。で、drugのアルバムには嬉しいことに、2nd,3rd,4thと全部のアルバムにフトシさんの声が入ってるんですよ。
高木:入ってる。オレはもう、本当にいいのかね?とずっと思っていたし、毎回有原に言ってたもん。
村瀬:えっ、いいって言うのは。その、オレで良いのかという?
高木:そう、そう、そう。
村瀬:そう言う思いだったんですね。
高木:折角デビューしたのに、オレがはいることで業界の偉い人は、こう可愛がりにくくなるじゃん。
村瀬:そうですかね(笑)?そんな事ないと思いますけど。メンバー的には、全然嬉しいって。
高木:未だに、覚えているもん。最終のコーラスのレコーディング終わってから、rec終わっているのに「フトシさんすいません。ワン、ツー、スリー、フォーだけもらってもいいですか」と言われたんですよ。で、それ(その声)を聴いて、全員で曲のカウントにしてレコーディングするんだって言って。
村瀬:そう、そう、そう。
高木:オレにやらせたって。普通聴くのはクリックだけだよ。
村瀬:あのコーラスのレコーディングには全く関係ない。
高木:あれはちょっと驚愕した。
村瀬:(笑)。それ、懐かしい!!あとは、東名阪とかでツーマンツアー。
高木:HATEでやったね。
村瀬:今思えば、ああいうのは普通に嬉しかったですけどね。
高木:すげえ楽しかったよ。まぁ、村瀬はあの打ち上げでオレと全然仲良くはしてくれなかったけど(笑)。
村瀬:(笑)。多分、今ならそれも言ってくれるんでしょうけど。
高木:そう言うやつなんだなと思ってたよ。でも別にいいじゃん。オレ意外と、年下だからどうこうとか後輩だからどうこうとかって思われるのも嫌だからさ。だから昔、村瀬が来たくなかったら来なきゃいいしだけのことだから。でも別にオレらに対して「いやあオレ嫌いなんですよね」みたいな感じじゃないじゃん、村瀬は。
村瀬:勿論そんなの無いです。
高木:そう。村瀬がオレらに対する愛は感じていたから。
村瀬:ありますよ、バリバリ。
高木:もう、そういうやつなんだなって。シャイなやつなんだという(笑)。
村瀬:そうですね。
高木:こう見えて、オレも意外とシャイだしね。
村瀬:本当ですか?まぁ、ライブを観に行っていた人たちと一緒に、メジャーとかインディーとかそんなの関係なくライブをやって、ツアーを回れたりツーマンなり出来てっていうのは、凄い嬉しかったですね。言葉で言えなかったぐらい。
高木:いやいやいや、そんな今言うなよ。泣いちゃうよもう。
【vez】
高木:オレね、1個だけ覚えているんだけど、大阪でラーメン食ったじゃん。あれだけは村瀬がいたんだよ。あっ、村瀬頑張ってきたって。
村瀬:頑張って(爆)。楽しかったですね~。それからフトシさんはvezになって。オレ、vezの初期もT$UYO$HI(P.T.Pと並行してvezに在籍)が居たというのもあって、何度か観に行っていて。でも緩い感じで伴走してて。
高木:緩すぎだよね。だってあのアー写、ガラケーの写メだからね。リハーサルの時にガラケーで写メを撮って、それをそのまま送るという(笑)。
村瀬:(笑)。あれ、結構ナメてましたよ。良いメンツでやっているのに。
高木:あの当時、ヒデオ(初代ベース)の時もそうだけど、本当にオレの所に飲みに来る連中じゃん。で「バンド組みませんか」と周りが言って、じゃあやろうかと。「BLACK SHEEP」という曲があって、オレこういう曲でやりたいんだよねという所から始まっているんだけど、HATE解散しているし、オレあんまバンドとかってガツガツやりたくないし。その当時のオレ、ソロもそういう感じだったの。オレがブログで有難うとか感謝とか尊敬とか言っているのも、お客さんが来てくれて、CDが売れればオレにいくらお金がは入って、ライブのギャラもオレにいくらお金が入るからであって、それ以外の何物でもないからねと。
村瀬:わっ、そこを言う。
高木:ぶっちゃけ、さらに物販も買って下さいとかガツガツ言うのも、もう嫌だから…みたいな感じだったんですよ。なんだけど、石川の時はお客さんが増えて行っちゃったんだよね。で、ライブの本数も増えるとスタッフも含めて、これでいいのだろうかとなってくるじゃん。なんか、オレ的にロックバンドとしてはまずいんだというのがあって、冷静に考えたのよ。で、石川はその当時P.T.Pをやっていたから、P.T.Pに専念したほうがいいし。今でもあいつはそうだと思うけれども、石川がいる場所って、あいつが一番年上じゃん。
村瀬:本人が年長者ですよね。
高木:あの当時ね、多分オレといると甘えられたんだと思うんだよね。それはそれで全然いいんだけど、やっぱりそこは、そこみたいなのがオレの中にあって。で、YANA(vez / Dr.)さんもYANAさんで、ZEPPET(ZEPPET STORE)をやるんだったら、ちゃんとZEPPETをやった方がいいしと思ってたし、お客さんもお金払って観に行くんだったら、ちゃんとしたバンドを見に行った方がいいしとかを思って辞めたの。
村瀬:それがvezの第1期で、それで止めたんですね。
高木:そう。オレら4人がどうしたいかも含めて、こんなことやっている場合じゃないじゃないかという思いだった。
村瀬:で、またやろうと思い立ったのは?メンツが集まって来てvezでやるのが良いと思ったのか、それともvezをやるからメンツを集めたのか。
高木:女の子ベースでとか色々考えていたし、どこかでやりたいなとは思っていたんです。
村瀬:そういう事も考えていたというのは初耳ですね。
高木:考えていた。だけど、あんまり踏み込めないでいたらスタッフが「vez今やらなくて、いつやるんですか」みたいな感じなので、いやいいけどさって。お前らでやれるのって言って、いや、「いつやるんですか」みたいな。で、1回アサキチ(ASAKI / vez / Gu.)も成一君(vez / Ba.)もYANAさんも、もしフトシがまたvezでバンドやるんだったら、オレだみたいな事を言ってくれていたから。
村瀬:個々に。で、そこから始まったと。
高木:そう。で、「やりますか」と言って声を掛けて。でも、アサキチの合流まで2年かかっているけど。
村瀬:それから新生vezの1発目が池袋CHOPだったじゃないですか。その時オレらが(対バンがTEARS)だったんですよ。
高木:そうだよね。自分では、ほぼほぼ覚えていなくて、自分たちで精いっぱいとかでもなくただ始まっちゃったなという感覚。あと、やっぱりCHOPにすごい世話になっていたからさ。オレらって、ああいう日でしか借り返せないじゃない。
村瀬:なるほど。オレらがあの日に対バンになった時、TEARSの存在はそんなに知らなかったっすよね?
高木:知って無かったね。
村瀬:オレらはオープニング的な扱いで全然いいですみたいな。だって、パンパンだったじゃないですか。
高木:ねえ。あれ以降、半分以上減ってそれで終わったけど(笑)。
村瀬:(笑)。で、ちょいちょい絡みが増えたのは最初のツアーの時に誘ってもらった稲毛K’s Dream。あとうちらのイベントGIGS PIGS GIGSにも出てもらって、The BONEZとの3マン。
高木:出たね。CHELSEA HOTELだっけ。
村瀬:そうです。ソールドでパンパンでしたよね。俺らでしか出来ない組み合わせだったと思います。あと後半になって、この前の東名阪があったり最後に沼津。
高木:繋がりというか、絆みたいなのがあったよね。
【カッコ良さ】
村瀬:オレ、何が良かったかってメンバー全員、お互いのバンド同士がフランクになれて。フトシさんとこういうふうに喋れる様になったし、ASAKIさんも成一さんもYANAさんもそうだし、そういう間柄になれるのって、すごい貴重だなと思って。個々にそういう付き合いは今後も続くと思うんですけど、バンド単位でそういうのって、本当に貴重だったなと思ってます。
高木:確かにvezって、そういう感じがあったかもね。でもさ、オレらもそれなりに年だからさ、それぞれがそれぞれでやってきて、それでvezがあったじゃん。その良くも悪くも、その個人でやっている事が意外とマイナスではあったね。だから村瀬がそういう風に言ってくれるのは、やっぱり嬉しいし分かるんだけど、バンドの中にそうやって壁作って、誰とも仲良くしないみたいな奴が1人ぐらいいるのもまた、良いバンドの何かだとは思うけれどもね。vezメンバーのそういう感じが、1人でやって行く分には良いんじゃないかな、きっと。周りにとっては、良いかもしれないけど、本人たちにとってはそういう良くも悪くもみたいな所がある。
村瀬:そうですかね…。
高木:TEARSはTEARSで、KOJIがそんなに出てこないじゃん。
村瀬:うん、そうですね。
高木:ああいうのが凄い大事だと思う。
村瀬:やっぱりオレも、基本的には誰とでもというわけではないですよ。下の子から見たら接しにくい部類です。
高木:それは大事だよ。村瀬がオレらみたいになる必要はないしっていう。あっ、そうか。それで貴重と言っているのか、村瀬は。
村瀬:そうです、そうです。フトシさんがそう出来るのはキャリアなのか?年齢なのか?
高木:どうなんだろうね?オレ自身の空気もあるのかもしれない。リハとかでもさ、言ったりする事とかが周りに浸透するじゃん?オレらはこうだからみたいな感じに、良くも悪くも持って行っちゃうタイプだから。だから、アサキチはアサキチで、メジャーなすごい有名な知り合いの人とか沢山いるけど、オレにしてみればそれは一切関係ないしさ。それよりもオレは、むしろアサキチ、アサキチ本人が好きだしアサキチ本人以外は興味がないからさ。成一君も同じく、本人が好きなのと成一君のベースが好きだから。YANAさんもそうなのよ。YANAさんがやっているラジオに、HATEの時に出演させてもらった時があって。で、その日YANAさんが帰り車で家まで送ってくれたのよ。で、その縁で仲良くなって、その当時から何も変わってないから。vezはそうあって欲しいというか、そのメンバーでやっているからというのは、ずっと思っていたのよ。それはスタッフに対してもそういう意識でいて欲しいと思っていたしね。あのスタッフだからと言って、腹黒く人と駆け引きをするような事をやる必要もないし、別に挨拶をする必要もないしとか。
村瀬:まぁそんなvezも終わってしまったんですけど…(泣)。
高木:まぁ、そうね。もう当分は、オレは本当にバンドはいいかな。
村瀬:それは、ソロでという事ですか。
高木:そうだね。圧倒的にオレの力がなさすぎるというのを思ったの。vezをやっている中でも、オレ個人の力とか皆んなをまとめ上げていく力とか。で、別にオレがまとめなくても良いんだけど、オレがまとめなきゃどうにもならないような状況になっちゃう。もう多分ね、持って生まれたものとしてあって、オレがやる以上はみたいな。
村瀬:はい、フロントマン気質。
高木:そういうのを踏まえた時に、オレの力がなさすぎる、器が小さすぎるというので、もしもう1回バンドやるとしても、オレが1人でライブやりますと言って100人集められなかったら、バンドが食える状態にまでは持って行けないなというのがある。あと、これはメンバーにも言ったし今までオレはそういう事を考えた事もなかったんだけど、1人の男としてカッコよくなりたいのよ。痛いだろう(笑)。
村瀬:おお、イイじゃないですか!!いやいや、痛くない。この年にして、それを改めて言えるのは素敵ですよ。
高木:そうなのよ。いや、そうなのよというか、オレ今年50じゃん。やっぱり50にもなってと思いたくないわけ。単純に、オレの中でカッコいい男になりたいんだよね。
村瀬:それが今のテーマじゃないけど、高木フトシはそう思っている?
高木:壮大なテーマ。単純に、死ぬときに思い残すというか、後悔したくないでしょう?「うわぁ、オレ超人生良かったな。迷惑かけてばっかりだけど、まぁいいや、オレカッコいいから」というのがよくない?
村瀬:そうですね。そう思って、最後を迎えられたら幸せですね。
高木:オレはそういう感じを目指している。何を持ってカッコいいかというのは厳しいんだけれど、でもそれをやらないから世の中が変わらないんじゃねえかと思ったりするのよ。例えば安倍総理1つをとっても、あいつ本人がそういうのを思えば、少しは世の中が変わりそうじゃん。常に自分にさ「ところでお前、それカッコいいの?」って問う。カッコよくなくてもいいんだけれども、本当にそれでいいのかいと。
村瀬:それを踏まえて、今はソロということですね。
高木:そう、そう。これも今は1人だから、ストレス無いし全然良い。
村瀬:対人(ヒト)とやっていると、やっぱりありますもんね。
高木:あるある、あるある。で、みんなのことも守んなきゃいけないじゃん。だから、言いたい事を言えない時もあるし。オレ、バンドだとどうしても旗持っちゃう、もしくはサッカーのサポーターみたいになる。でも1人だと、それをしなくて済むから楽だよね。
村瀬:気張んなくていいみたいな?
高木:そう、そう、そう。ただ、ステージ立つ時に1人だからそれはメチャ怖い。けど、それもまたやり切ると、1人だからこそ、その時に周りでオレを手伝ってくれている連中に対する感謝みたいな思いが、ドーっと押し寄せてきて、1人じゃねえなとなる。でもオレ、まだ成一君とバンドやっているんだ。
村瀬:ええっと??
高木:エアだけど。
村瀬:あっエア(笑)。
高木:そう(笑)。
【ギター】
村瀬:vez後期に思っていた事があって。オレが言うのも変なのですけど、フトシさんのギターがすごい良くなったというか。
高木:ゼマイティスになってからじゃない?(笑)
村瀬:多分、そう。その竿を変えたというのも多分あるんだと思うんですけど、こう意識的にしていたとかあるんですか?ソロをやっているからリズムも安定もしているし、しっかりコードも鳴ってるというか。ヴォイシングがこう綺麗だし、凄くフトシさんの音が聴こえるようになってきて。
高木:意識はね、常にしているの。抜けちゃうんだよね。でも、JCのボリューム1とかなのに、皆んなにデカイとか言われるし。
村瀬:(笑)。でも、良かったですけどね。聞きたい大事なところが聞こえるようになったみたいな。
高木:やめてくれ、褒めるの(笑)。単純に、TEARSも村瀬のギターがあって、ucchyのギターがあって両方じゃん。両方があってTEARSじゃん。だからvezもそうならないと、楽曲の音像が完成しないからそれで頑張った。
村瀬:そう。ただのバッキング・ギターですではない、ちゃんと聴きたいところが聴けて、良い音が鳴っているなという印象がある。
高木:いや、嬉しい!確かにみんなに「あれどうなっているんですか?」聞かれる。
村瀬:HATEの頃から弾いていますもんね。
高木:HATEの時には、敦がパワーコードで持ってきた曲なんだけど、敦が「何かこれさー」って、「ちょっとおしゃれな感じにコードが変わるじゃん」って。
村瀬:超分かる(笑)。
高木:そういうあれだったから。で、オレ自体があの感じのパワーコードを嫌いなのよ。
村瀬:ちゃんと、こうボイシングを聴かせたい。
高木:そうそう。で、聴かせたいんだけど普通のコードじゃ嫌で、だったらオレの中で不協和音の方がまだいいのよ。
村瀬:なんか、1音足したりしたい、引っ掛けたい。
高木:そう。で、普通のスリーコードでも、それをやることで、今までと違うというか、このバンドにしかないよねみたいな。
村瀬:それがオリジナリティみたいな。それは聞けて良かったな。
高木:それを皆んなやるべきだと思うんだけれどもね。何か、やらないよね。歌に当たっているとか、他のこの音が聞こえなくなるとかっていう話には直ぐなる。いいのよ、当たっても何しようが別に。それが良きゃいいだけのことじゃん。絶対、聴いたことない感じにしようというのは、自分では気を付けているのよ、実は。
村瀬:近づけば、それが、どういう形であろうといい。うん、なるほど。
高木:HATEのチェアとかさぁ、当時「あれ、コードどうなっているの」ってすごい聞かれて、多分そういうのが好きなの(笑)。
村瀬:(笑)。
高木:SUN OF LOVEもそうね。
村瀬:オレ、SUN OF LOVE、メチャ好きっすよ。あれBメロの半音ずつ上がって行くところとか、2つ目とかで指を違うところを押さえるんですよ。
高木:知っているね(笑)。それ嬉しいわ。
村瀬:ただ、マイナー・メジャーで上がってないなという。
高木:有難い、有難い!でもさぁ、別に主張してないでしょ。オシャレでしょう、みたいなの無いでしょ。
村瀬:主張していない。自然な感じで流れてる。
高木:もう、ビートルズ以降コピーでしかないから、それはしょうがないんだけれど、でもやれることはまだあるんだよ。それは、本当カートから教わったから。
村瀬:ブレない所ですね。
高木:でも、カートにはなれないんだけれど。
村瀬:やっぱり今でも、カートへの思いは強いですか?アーティストとして憧れているのか、ああなりたいという憧れなのか?
高木:アーティストとして、カート・コバーンという人間かな。
【影響】
村瀬:カート以外、いっぱい音楽を聴いていると思うのですけれど、他に、超影響を受けている曲やアーティストっているんですか?
高木:オレね、その話は村瀬としたかったんだよ。Tears for Fearsとかはすごい聴いたね。特に、ソロも好きだからRoland Orzabalとか。
村瀬:へえー、意外ですね。
高木:カートを好きになる前は、ローランドすごい聴いてて、詩も好きなんだ。
村瀬:それは初耳ですね。まぁ時代的に、フトシさんは80-90年代をリアルタイムで聴いていると思うんですけれど。
高木:でもね、オレがPAやってたじゃん。だから、メチャメチャ聴いているのよ。一応、全ての楽器に対応できないと仕事になんないから。で、好きな音楽が一杯あり過ぎて、こう話せたりはしないけど、キーワードが出てくればいくらでも話は出来るよ。だその中でも、良くも悪くも気持ちがガラッと変わったのが湾岸戦争の時かな。
村瀬:そこですか。
高木:初めてそこで、あの当時のU2の価値とかジョー・ストラマーの言葉とかに気が付き始めたというのがあるかな。その当時、イーグルスのDon Henleyが「エンド・オブ・ザ・イノセンス」というソロアルバムを出していて、レーガン政権の時のことをに曲にしていた「エンド・オブ・ザ・イノセンス」という曲があるんだけど、そんなのとか傾倒してた。それでHATEを始める前に、敦がオレの所にニルヴァーナを持ってきてもうビックリして。「もうこれを最後まで貫くとしたら、もう死ぬしかないぜ」と敦に言ってたりしてたの。
村瀬:(笑)。
高木:で、本当に死んじゃったから「ハアッ」と思って、まぁ薬のせいだとは思うけど。俺はそういう感じかな、村瀬は?
村瀬:オレも基本、幅は本当に広くて何でも聴くんですけど、一番強く残っているのがニューウェーブとか初期パン(パンク)の世代が好きで。90年代ぐらいから、リアルタイムで聴くようになってブリティッシュな辺りに行って、気付くとイギリスのアーティストが多いかなと。あと、基本的にハードロックがダメだったので。
高木:それはいい事だと思う。オレ、ハードロックですごく好きだったと思うのは何一つ残っていない。
村瀬:マジっすか(笑)。
高木:自分のためになっていない。ハッピーな感覚としては、とってもいいかもしれないけど。
村瀬:ああ、ためになっていない。そういう残り方はしていないと。
高木:そう。だけど、何て言うのかな。ハッピーな感覚としては、とってもいいかも。あのバカさ加減みたいなのを会得しとくと、ライブでお客さんを盛り上げる時に役に立った。
村瀬:ああ、なるほどね。でも、受け付けなかったね。色んな物を消化してあとになってから、ハードロックを聴けるというか。で、見た目があんまり好きじゃなかったんで(苦笑)。
高木:そうだな(笑)。
村瀬:好きなアーティストと言われると、よく名前出して言うのは、デビットボウイはアーティストとしてもミュージシャンとしても好きで、素晴らしいなというのはあります。
高木:うん。すごいよね。あの人は、何かちょっとサイボーグなところがあるからな。
村瀬:(笑)。フトシさんは、あんまり好きではないですか?
高木:普通に聴いているよ。でも、デビットボウイって毎回違うじゃん。だからなかなか絞れないかな。デビットボウイ本人は、多分オレらが思うようなUKというような感覚は無いじゃん。
村瀬:確かに。意識してないかもしれない。
高木:イギリス人だから。デビットボウイが好きならば、音楽を作る上でオレらもその感覚は抜いた方がいいと思うって、オレはUKの音楽が好きだという人には大体言う(笑)。
村瀬:何それ(笑)。
高木:でも、なんかあれだよね。limpとかkornにも行くよね。
村瀬:そうですね。世代的にあの辺は通ってます。オレね、そういうヘビーな物が聴けるようになったきっかけはNine Inch Nails。あれもハードロックとかではないんですけど、アートロックなインダストリアルであった思うんです。そのあとにマリリン・マンソンとかで、すぐにRAGE・レッチリみたいなリズムが跳ねたようなアーティストに行ってからは、すんなり入ってこれました。
高木:その辺が無かったらドラッグストア(drug store cowboy)やれないもんね。その影響を多分に受けていたと思う。
村瀬:そうですね。まぁいい意味で、オレがUK寄りでいたというか完全にそっち寄り(ヘビィー ・ハード)ではなかったので、面白かったのかなと思いますけど。
高木:村瀬は、いいね。今もちゃんと音楽があるというのは。
村瀬:いやいやいや(笑)。
【拘り】
村瀬:さっきのカッコイイに通じるところで、音楽も含めて普段生活していく中で拘っているものってありますか?
高木:真剣に思っている事で、今は宇宙に行くというような時代なのに、人殺しがなくならないことをなんでだろうと思う。ましてや、去年はNTTが世界一の量子コンピュータを開発してるような時代なのに、毎日誰かが人を殺している。その疑問が自分の中で解けないの。だから、それをちゃんと言い続けたいし、「いつまでそんなことをやるの?」という事を歌う上で意識している。
村瀬:深い。
高木:単純に、何で人が人を殺すんだろうというのを強く思うようになった。沖縄の事も、大事なのは辺野古に生きている物があるわけじゃん。その海にしかいない生き物が、そこで泳いでいる訳じゃん。そこもクリアできないと、アメリカも日本も人として問題がある。でも、政治的なことも防衛や経済のこともわかるから、オレがそれに対して「ごめんね」という思いで歌いたくて、歌えるんじゃねぇかって。最近、そうなりたいし、人のを歌うんじゃなくてそういうのを歌いたいの。村瀬は?
村瀬:特に昔はトンガっていたらだと思うんですけど、例えば対バンでもカメラマンでもインタビュアーでも、こうやって始めって会った時に、馬が合わなかったとか上手くいかなくて噛み合わない時、昔だったら「何だコイツ」って思ってそれで終わりで。でも、最近はそれを「今はタイミングじゃないんだ」なと思えるようになった。今日会ったけど、今日は仲良くなれないなとか。
高木:初めてオレと会った時の村瀬は(笑)。
村瀬:いや、それとは違います。振り出しに戻された(笑)。
高木:ならいいんだけど(笑)。
村瀬:あの時はただのシャイだった。シャイでしかも先輩だったので、あれだった(笑)。みんなが仲良くなれなくてもいいと思うんですけど、ギクシャクしても昔ほどイライラしない。今日はタイミングが良かったと思える力量じゃないけど、そういう風に思えるようになってから、上手くいくようになったという話なんですけど。それが拘りかな。
高木:いいな、村瀬は。カワイイ、カワイすぎる(笑)。
村瀬:(笑)。で、昔はそれでただイライラしていました。「コイツ感じ悪いな」とか。ミュージシャンって、バチバチするじゃないですか。
高木:うーん、バチバチした事はない。
村瀬:え、無いですか?今はみんなさ、直ぐ仲良くなるじゃないですか?何か分かんないけど「インスタやってる?」「フォローするよ?」とか。
高木:ああ、あるね。
村瀬:まぁ全然それも別にいいですけど、みんな仲良くなりやすいじゃないですか。オレらがやっていた20歳頃って、やっぱり「何だこいつ」っていう若干ケンカ腰な感じ。フトシさんの世代も絶対そうなっていたと思う。
高木:目の合った後輩を潰すみたいな感じのことかな。
村瀬:例えば「お疲れ様です」と言ってもシカトしてくるとか。
高木:そういうの全然、楽勝だもん。
村瀬:いやいや。楽勝っていうのは。それは、器がデカイから。
高木:多分それね、あの中学生時代にあった修羅場というか(笑)。これ、文字に起こせないと思う。
村瀬:書けないじゃないですか(笑)。
高木:(笑)。でもね、それは絶対あると思うよ。やっぱり中学とか10代で、修羅場を潜り抜けているやつって、全然そんなのどうでもいいのよ。
村瀬:中学生で修羅場ってあるのか(笑)。
高木:ピュアすぎるわ。それは、オレと一緒に飲むのに20年かかるわな。
村瀬:かかる(笑)。
高木:しかもこれ対談だし、若干仕事だし(笑)。もう次は仕事抜きで飲むぞ。
村瀬:ああ、もう全然、まぁ、今日も仕事じゃないですよね、うん。
高木:でもそうね、最近の人たちは単純に他人の事を気にしすぎる風潮はあるよね。例えばオレだったらインスタやっていて、いいねの数とかどうでもいいことを言う人と会った時に、挨拶してシカトされたとする。人と人だから、それはそいつがたまたまそういう時だったかもしれないし、そいつのその時のバックボーンなんて分かんないから。
村瀬:背景は分かんないですね。
高木:オレがメチャクチャお金がなくて、昨日も何も食ってなくて、今日のライブも必死で誰かに電車賃借りてその場に来ていたかもしれないしって、分かんないから。
村瀬:そこまで考えられるのが素晴らしい。
高木:人って、それぞれに事情があるしそういうもんじゃない。寧ろ、こうやって飲みに行った時に、なんかより楽しくなれるじゃん。
村瀬:今フトシさんが言った「当たり前を思える様に」っていうのにオレはなれたという話ですね。
高木:じゃないかな(笑)。
村瀬:拘りではなかったですね。
高木:成長(笑)。結論に近づいてきた。他に音楽をやる上で思想的な何かはないの?
村瀬:真面目で職人気質なので、キッチリしちゃうんですよ。例えばレコーディングとで「出来ない」とか「弾けない」とか言われると、「そんなのやって来いよ」「練習して来いよ」って思う。でも何十年も音楽をやってきて、やっぱりちょっと固すぎるなというのを自分で感じてて。自分の拘りでちゃんとやるのは良い部分なんですけど、部分的に抜いても良いかなというか、自由な部分があったもっと楽しいと思うようになって。今までずっと固くやってきた分、逆も良いなと見えるようになったというか。
高木:変えられないと思うよ。村瀬って、イメージ出来てるから最終形までデザインしちゃうんだよ。敦もそうなんだよ。
村瀬:そうなんですね。
高木:なんだけど、人と人とで作っているものだから、それは無理だって。だから、そう言うように人とやる時は楽しんだ方が良いと思う。
村瀬:そうっすね。昔は下手したら、人に言われた事はまずやらないみたいな。「オレが考えた方が良いでしょ」みたいなスタンスだったんですけど、いろんなバンドを経て今は自分でもわかるくらい受け入れる幅が広がったと思うんです。
高木:大人になったんだ。
村瀬:まぁ平たく言うと、大人になったのか。もしくは年食って柔らかくなったのかで、20年かかったんですね(笑)。
高木:かかりすぎだって(笑)。
村瀬:いいじゃないですか(笑)。面白くないっすか(笑)。
高木:そうね、かかっても今こうしているから(笑)。単に20年ってさぁ、1度も飲みに行った事がなかったのに普通…。
村瀬:急に連絡する(笑)。
高木:そう。だから、早速kojiにLINEしたもん。「村瀬が、なんか20年の歳月を経て呑みに誘ってくれてんだけど」って。
村瀬:(爆)。
高木:それぐらい、感動した。村瀬の対談話を聞いた時に、しかも酒でも飲みながらっていう。
村瀬:(笑)。
高木:でもvezのラストライブ来なくて。
村瀬:病欠です、あれ(笑)。
高木:オレ的には、それがあったのかなと思っていたの。ラストのライブに行けなかったから、村瀬的に何か伝えたいって。
村瀬:ああ、行けなかった事をね。
高木:というのがあったから、そうなのかなと思ったりしてたの。でも違うよって、どんだけピュアなんだ。
村瀬:(笑)。
高木:でも、今日はホントに嬉しかったよ(笑)。
interview & text Atsushi Tsuji (classic0330)
– 高木フトシ –
2018年 吉祥寺曼荼羅 隔月ワンマンスケジュール
3/21(水祝)Complex numbers 吉祥寺曼荼羅
5/5(土祝)edit 吉祥寺曼荼羅
7/20(金)Probability distribution 吉祥寺曼荼羅
9/17(金祝)Mixture Crusher 吉祥寺曼荼羅
11/23(金祝)The evolution operator 吉祥寺曼荼羅
3/10(土)イベント/柏04
3/30(金)イベント/吉祥寺GB
4/21(土)「新宿心音会板谷祐と高木フトシとCITTA’の唄宴×10」 川崎CLUB CITTA’ -All night-
4/26(木)The afterimage of the disappearing light 池袋手刀ワンマン
詳細はオフィシャルHPにて→ http://akuh.seesaa.net/